2023年に始まったインボイス制度から数年。今、経理実務は「PDFのやり取り」から、さらなる進化を遂げようとしています。その鍵を握るのが、世界標準規格「Peppol(ペポル)」ベースのデジタルインボイスです。
本記事では、クラウド業務管理ソフト『スプレッドオフィス』を提供するプロの視点から、Peppol導入で入力作業をゼロにする具体的な手順や、2026年の経理現場で起きている劇的な変化を詳しく解説します。
2026年、なぜ今デジタルインボイスへの移行が必要なのか?
導入によって業務がどう変わるのか、具体的に解説します。
デジタルインボイス(Peppol)とは?「PDF送付」との決定的な違い
これまで主流だった「PDFの請求書をメールで送る」方法は、実は本当の意味での「デジタル化」ではありませんでした。受け取った側は、PDFを見ながら手入力で会計ソフトに打ち込む必要があったからです。
デジタルインボイスは、「請求書そのものがデータ」としてやり取りされます。
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PDF: 人間が読むための「画像データ」(転記作業が必要)
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デジタルインボイス: システムが読むための「構造化データ」(自動で会計処理が可能)
2026年に導入すべき「3つの圧倒的メリット」
入力作業が「ゼロ」に。仕訳まで自動完結
最大のメリットは、「転記」という概念がなくなることです。
Peppol対応システム同士であれば、請求書を発行した瞬間に相手のシステムへデータが届き、自動で仕訳案が作成されます。2026年、深刻化する人手不足への最強の解決策となります。
支払い・消込の自動化
銀行のオンラインバンキングと連携すれば、届いたデータをもとに「支払い予約」までワンクリックで完了。
検収データとの照合も自動化できるため、前回解説したような「検収書トラブル」のリスクも劇的に低減します。
インボイス制度・電帳法への完全適合
デジタルインボイスは、最初からインボイス制度の要件(登録番号の検証など)を満たした状態で生成されます。また、そのまま電子保存されるため、電子帳簿保存法への対応も意識することなく完了します。
実務はどう変わる?導入前後の比較
これまでは「数字が合っているか」という作業に時間の8割を割いていました。2026年のデジタルインボイス運用では、「システムが自動照合して、不一致(エラー)が出たものだけを人間がチェックする」というスタイルに変わります。
【重要】Peppol ID と インボイス登録番号(適格請求書発行事業者登録番号)の違い
一言でいうと、「データの送り先(Peppol)」か「税金の資格(インボイス)」かの違いです。
| 項目 | Peppol ID(ペポルID) | インボイス登録番号(適格請求書発行事業者登録番号) |
| 役割 | デジタルインボイスを届けるための「ネット上の住所」 | 消費税の仕入税額控除を受けるための「納税資格の証明」 |
| 形式 | 0154:1234567890123(0154+法人番号) |
T1234567890123(T+法人番号) |
| 使う場所 | システム間でデータを自動送信する際 | 請求書(データ)の印字項目として |
デジタルインボイス導入時に注意すべき「3つの落とし穴」
メリットばかりが目立つデジタルインボイスですが、導入時には以下のポイントをクリアしておく必要があります。
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取引先との合意が必要: 自社がPeppolに対応しても、取引先が対応していなければデータ送信はできません。2026年現在は普及期のため、「デジタル」と「PDF/紙」の並行運用期間が発生することを想定しましょう。
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マスタデータの整備: データの自動照合を正しく行うためには、自社システム内の「取引先コード」や「商品コード」が整理されている必要があります。
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Peppol IDの取得が必要: メールアドレスのように、デジタルインボイス専用の住所となる「Peppol ID(法人番号などがベース)」を取得する必要があります。
【5分でわかる】Peppol IDの登録・利用開始ステップ
デジタルインボイスを使い始めるための標準的な流れは以下の通りです。
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Peppol対応のソフトウェアを選ぶ
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Peppol IDの発行申請: 利用するソフトの管理画面から申請します。日本の場合は「法人番号」をベースとしたID(例:0154:法人番号)が一般的です。
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取引先のPeppol IDを確認: 送付先のIDを確認し、システムに登録します。
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テスト送信の実施: まずは数件、正しくデータが相手のシステムに届き、会計連携されるかを確認します。
デジタル庁が認定するサービスプロバイダ(クラウド会計や請求書作成サービスなど)を通じて発行申請を行います
法人番号とPeppol IDの関係・特定方法
「相手のIDをどう探すか」
■ Peppol IDとは?法人番号との紐付けを理解する
デジタルインボイスを送受信するための「住所」にあたるのがPeppol IDです。
日本の運用では、混乱を防ぐために「法人番号(13桁)」がそのままIDのベースとして採用されています。
IDの形式:
0154:法人番号(0154は日本を示す国コード)検索性: 法人番号が分かれば、相手がデジタルインボイスに対応しているかをディレクトリ(Peppol対応名簿)ですぐに確認できます。
メリット: 新規取引先でも、法人番号さえ把握していれば、面倒なメールアドレスの確認なしに「システム間直送」が可能になります。
デジタルインボイスと銀行振込(全銀EDI)の連携
「支払い業務の完全自動化」
■ 経理の悲願「全銀EDI(ZEDI)」連携で振込作業が消える
デジタルインボイス(Peppol)の真価は、銀行振込(全銀EDIシステム:ZEDI)との連携で発揮されます。
2026年現在、Peppolで届いた請求データには、振込先や金額といった詳細な「EDI情報」が含まれています。これを会計ソフトから銀行へ連携させることで、「振込金額の手入力」や「支払い通知書の作成」が一切不要になります。 入金時も、届いたデータと通帳履歴が自動で照合(消込)されるため、月末の残業時間を大幅に削減できる「攻めの経理」への第一歩となります。
IT導入補助金の活用
■ 「IT導入補助金」を活用して低コストでデジタル化を実現
デジタルインボイスへの対応を検討する際、避けて通れないのがコストの問題です。 2026年も継続されている「IT導入補助金」のインボイス枠(あるいはDX化支援枠)を活用することで、システム導入費用の最大2/3〜3/4が補助されるケースがあります。
スプレッドオフィスのようなツールを導入する場合、ソフトウェア利用料だけでなく、初期設定費用なども補助対象となるため、コストを最小限に抑えつつ、世界標準のデジタルインボイス環境を整えることが可能です。
>>デジタル化の相談を承っています。
デジタルインボイスに関するよくある質問(FAQ)
Q. デジタルインボイスに印影(ハンコ)は必要ですか?
A. 不要です。Peppol経由で送られるデータ自体に信頼性があるため、印影がなくても法的・税務上の有効性は変わりません。どうしても必要な場合は、データ上の備考欄や画像として添付することは可能です。
Q. 電子帳簿保存法の「電子取引」として保存する必要がありますか?
A. はい。デジタルインボイスは「電子取引」に該当します。Peppol対応のクラウドサービスであれば、そのまま法要件を満たした形で自動保存されるため、別途作業は不要になることがほとんどです。
Q. 相手がPeppolに対応していない場合はどうなりますか?
A. その場合は、従来通りPDF形式での発行・送付に自動で切り替える機能を持つシステムが一般的です。相手の状況に合わせて柔軟に使い分けましょう。
Q. 導入費用はどのくらいかかりますか?
A. 多くのクラウドサービスでは、基本料金内や安価なオプションとして提供されています。2026年現在は、IT導入補助金などの支援制度も活用できるケースが多いため、確認をおすすめします。
Q. デジタルインボイスはJP PINTに準拠していますか?
A.はい、日本における「デジタルインボイス」は、国際規格Peppol(ペポル)をベースに日本の商習慣に合わせて策定された標準仕様「JP PINT」に準拠しています。
デジタル庁が主導するこの規格により、システムの垣根を超えたスムーズな請求・受領業務が可能となります。
デジタルインボイスを支える「技術と法規制」の基礎知識
デジタルインボイス(Peppol)の導入を検討する際、避けて通れないのが以下の5つのキーワードです。これらは、システムが正しく、かつ法的に有効に機能するための「土台」となります。
日本標準仕様「JP PINT」への準拠
Peppolは世界標準ですが、日本の商慣習(消費税率や端数処理など)に合わせる必要があります。そのための日本国内ルールが「JP PINT(ジェイピー・パイント)」です。 スプレッドオフィスのようなクラウドサービスは、このJP PINTに準拠しているため、国内の取引先と齟齬なくデータ交換が可能です。
「デジタル庁 認定」サービスプロバイダーの役割
自社システムを直接Peppolに繋ぐには膨大なコストがかかります。そこで重要なのが、デジタル庁から認定を受けた「サービスプロバイダー」の存在です。 彼らが提供する「アクセスポイント(中継局)」を経由することで、ユーザーは複雑な設定なしに、安全かつ高速にデジタルインボイスの送受信が可能になります。
「e文書法」および電子帳簿保存法への適合
デジタルインボイスは、紙の保存を不要にする「e文書法」や「電子帳簿保存法」の要件を高いレベルで満たします。
データに付与されるタイムスタンプや、送信経路の暗号化により、改ざんのリスクを極限まで排除。税務調査の際も、システム上の検索機能だけで即座に証憑を提示できるため、管理コストが大幅に削減されます。
「適格請求書発行事業者登録番号」の自動検証
インボイス制度において最も重要な「適格請求書発行事業者登録番号(T番号)」。
デジタルインボイスでは、この番号が正しいものかどうかをシステムが国税庁のデータベースと照らし合わせて自動検証します。
手書きやPDFでは見落としがちな「登録取り消し済み業者」からの請求なども、受取時にアラートが出るため、仕入税額控除のミスを未然に防げます。
2026年、乗り遅れないためのステップ
「うちはまだPDFで十分」と思っている間に、取引先から「デジタルインボイスでの請求をお願いしたい」と打診されるケースが急増しています。
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自社システムの対応状況を確認: 今お使いのツールがPeppolに対応しているかチェック。
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小規模な取引からスタート: 全て一気に変えるのではなく、対応可能な取引先から順次切り替え。
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スプレッドオフィスのようなクラウド型への移行: 常に最新の法令・規格にアップデートされるクラウドサービスを選ぶのが、最も低コストで確実な方法です。
まとめ:2026年、バックオフィスは「自動化」が標準に
デジタルインボイス(Peppol)への対応は、最初は少し難しく感じるかもしれません。
しかし、一度設定してしまえば、これまでの「手入力」や「確認作業」に費やしていた膨大な時間が、自社の成長のための時間に変わります。




