ペーパーレス化」は、もはや単なるコスト削減策ではなく、ビジネスのスピードアップとコンプライアンス(法令遵守)強化に不可欠な経営戦略です。特に経理部門や総務部門は、日々大量の書類(契約書、請求書、領収書、納品書など)を扱い、その電子化と保管は喫緊の課題となっています。
この記事では、ペーパーレス化を成功させるための具体的なステップと、すべての企業が対応必須の電子帳簿保存法(電帳法)への対応方法を解説します。
ペーパーレス化がもたらす4つの主要メリット
ペーパーレス化は、書類の物理的な管理コストを下げるだけでなく、企業活動全体にメリットをもたらします。
| メリット | 具体的な効果 |
| ① 業務効率の向上 | 書類の検索・共有が瞬時に完了し、確認や承認のプロセスが迅速化します。 |
| ② コスト削減 | 紙代、印刷代、郵送費、書類保管スペースの賃料などが削減されます。 |
| ③ コンプライアンス強化 | 電子帳簿保存法に基づき、証拠書類の改ざん防止や長期保管が容易になります。 |
| ④ BCP(事業継続計画) | 災害時などに書類が物理的に失われるリスクがなくなり、事業継続性が高まります。 |
ペーパーレス化の最大の壁:「電子帳簿保存法」への対応
日本国内のペーパーレス化において、最も重要な法令が電子帳簿保存法(電帳法)です。この法律は、国税関係の帳簿や書類を電子データで保存するためのルールを定めています。
2024年1月からの義務化:電子取引データの電子保存
特に注意が必要なのは、電子取引データ(メールで受け取ったPDFの請求書や納品書、クラウドサービス経由の取引データなど)に関する規定です。
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2024年1月1日以降、電子的に授受した取引データは、原則として紙に出力せず、電子データのまま保存することが義務化されました。
電子保存で満たすべき要件(真実性・可視性の確保)
電帳法に基づき、電子データが「証拠」として認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
| 要件 | 概要 | 具体的な対応例 |
| 真実性の確保 | データが改ざんされていないこと。 | タイムスタンプの付与、または訂正・削除の履歴が残るシステム(クラウド会計など)を利用。 |
| 可視性の確保 | 必要なときに、必要なデータが確認できること。 | 検索機能の確保(「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できること)。 |
これらの要件を満たさない場合、税務調査で経費として認められないなどのリスクが生じます。
ペーパーレス化を段階的に進める戦略
すべての書類を一気に電子化するのは困難です。以下の3段階で、重要度の高い書類から着手しましょう。
Step 1: 電子取引データの対応(最優先)
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対象: メールやクラウドで受け取った請求書・納品書・領収書。
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対応: これらの電子データを電帳法の要件に従って保存できるシステム(ストレージまたはクラウドサービス)を導入し、保存ルールを確立します。
Step 2: 紙で受け取った書類の電子化
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対象: 郵送で届いた請求書・領収書など、紙の証憑書類。
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対応: スキャナ保存の要件(一定水準以上の解像度、タイムスタンプなど)を満たした上で、スキャンして電子データ化し、原本の廃棄を検討します。
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※2022年1月以降の法改正により、税務署長の事前承認は不要になりました。
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Step 3: 自社作成書類(控え)の電子保存
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対象: 自社で作成・発行した請求書、納品書、見積書の控えなど。
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対応: WordやExcelではなく、発行と同時にデータが保存される請求書発行システムや販売管理システムに移行します。これにより、紙の控えが不要になり、電帳法の要件も満たしやすくなります
成功のための組織的なポイント
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システム導入とルール策定のセット: ただシステムを導入するだけでなく、「誰が、いつ、どのように保存するか」という社内ルールを明確にし、従業員に周知徹底することが不可欠です。
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段階的な導入: 小さな部署や特定の種類の書類から試験的に導入し、成功事例を横展開していくのが最も効果的です。
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経理部門の主導: ペーパーレス化の最終目的はコンプライアンスの強化と業務効率化であるため、経理部門が中心となって推進することが成功への鍵となります。
ペーパーレス化は、企業の未来に向けた投資です。


