注文書とは?その役割と契約成立の仕組み
注文書(発注書とも言います)とは、発注側(買主)が受注側(売主)に対し、具体的な商品やサービスの購入・発注を申し込む意思表示を行う書類です。
これは商取引における非常に重要な書類であり、主に以下の役割を果たします。
- 取引内容の明確化と証拠の保全: 品名、数量、単価、納期、支払い条件といった主要な取引条件を明確にし、後日の「言った・言わない」のトラブルを防ぎます。
- 契約成立の基礎: 注文書は民法上の「申込み」にあたります。これに対し、受注側が「注文請書」を発行するか、または納品や作業着手などの行為をもって「承諾」の意思を示すことで、契約(売買契約や業務委託契約)が成立します。
注文書と混同しやすい書類との違い
| 書類名 | 目的・役割 | 法的効力 |
| 見積書 | 契約締結前に、取引先が提示する金額や条件の提案。 | 原則、法的効力なし(提案段階)。 |
| 注文書 | 発注側が、取引先に対し「この条件で発注します」と契約の申込みをする。 | 受注側が承諾すれば、契約の証拠となる。 |
| 注文請書 | 受注側が、注文書の内容を「確かに承諾します」と契約の承諾を通知する。 | 注文書とセットで、契約成立の強力な証拠となる。 |
| 契約書 | 取引の全体的な条件や、権利義務関係を双方が合意し、締結を証明する書類。 | 最も強い法的効力を持つ(特別な契約で使われることが多い) |
注文書の正しい書き方と記載必須項目
正確でトラブルのない注文書を作成するためには、以下の項目を漏れなく記載することが重要です。
記載必須項目一覧
| 項目 | 記載内容のポイント |
| タイトル | 書類上部に「注文書」または「発注書」と明記する。 |
| 発行日 | 注文書を作成・発行した日付を記載する。 |
| 宛名(受注者) | 相手先の正式名称を記載し、「御中」や担当者名には「様」を使う。 |
| 発注者情報 | 自社の会社名、住所、電話番号、担当者名を記載する。 |
| 管理番号 | 自社で管理しやすい独自のナンバリング(例:PO-20251113-001)を振る。 |
| 注文内容 | 品名(具体的な商品・サービス名)、数量、単価、小計を表形式で記載する。 |
| 合計金額 | 税抜金額、消費税額、税込合計金額を明確に記載する。 |
| 納期(納品希望日) | 商品やサービスの納品を希望する期日を記載する。 |
| 納品場所 | 納品先が自社住所と異なる場合、具体的な所在地を記載する。 |
| 支払い条件 | 支払い方法と期日(例:月末締め、翌月末日銀行振込)を記載する。 |
| 有効期限 | 相手方の承諾を求める期限を設けることで、取引の停滞を防ぐ。 |
| 特記事項 | 備考欄などに、個別の注意点や取り決めがあれば記載する。 |
押印(印鑑)の必要性
注文書への押印は法律上の義務ではありません。
しかし、日本の商習慣においては、会社の角印(社判)や丸印(実印)を押すことで、その書類が正式に会社から発行されたものであることの証明(証拠能力の強化)となり、信頼性を高める役割を果たします。押印する場合は、社名に少し重ねるように押すのが一般的です。
注文書の法的効力と注意点
注文書が持つ法的な意味合いと、実務上のリスクを避けるための注意点を解説します。
法的効力:契約成立のタイミング
前述の通り、注文書(申込み)だけでは契約は成立せず、受注側からの承諾が必要です。
- 注文書を発行(申込み)
- 相手が注文請書を発行・返送(承諾)
- 契約成立
注文請書がない場合でも、取引先が注文内容に従って商品を出荷したり、作業に着手したりした場合(事実上の承諾)も契約は成立したとみなされます。
収入印紙の必要性
原則として、注文書は単なる取引の申込み書であるため、印紙税法上の「契約書」には該当せず、収入印紙は不要です。
ただし、以下の場合は課税対象となる「契約書」とみなされ、収入印紙が必要になる可能性があります。
- 注文書に「本書をもって売買契約を締結する」など、契約の成立を証明する文言がある場合。
- 注文書と注文請書を兼ねており、双方の署名・押印がある場合。
- 取引の基本事項を定める「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)に該当する場合。
迷った場合は、税理士や法務部門に確認するか、高額な取引の場合は契約書を別途作成することが最も安全です。
注文後のキャンセルや変更
一度注文書を発行し、相手方が承諾した(契約が成立した)後の一方的なキャンセルや変更は、契約違反(債務不履行)となり、損害賠償を請求されるリスクがあります。
キャンセルや変更の可能性がある場合は、あらかじめ「納期前のキャンセルは〇日前まで可能」など、特記事項や基本契約書で取り決めをしておくことが重要です。
【すぐに使える】注文書テンプレートの活用と選び方
エクセルテンプレート(A4縦)
注文書(発注書)エクセルテンプレート(A4横)
テンプレート利用時のチェックポイント
テンプレートを使う際も、以下の点は必ず確認し、自社仕様に修正しましょう。
- 必須項目の記載漏れがないか: 特に管理番号や支払い条件、納期は必須です。
- 自社情報への書き換え: テンプレートのサンプル情報が残っていないか確認します。
- 消費税の記載方法: 「税抜」「税込」「消費税」が分離して明確に記載されているか。
正しい手順と法的知識をもって注文書を作成することは、スムーズで信頼性の高いビジネス取引の第一歩となります。










