図解でわかる!『下請法』と『フリーランス新法(取適法)』の使い分け・徹底比較 

コラム

2024年11月に施行された「フリーランス新法(取適法)」。これにより、これまで下請法の対象外だった小さな取引も法規制の対象となりました。

施行から時間が経過し、行政による立入検査や是正勧告の事例も出始めています。
『知らなかった』では済まされないフェーズに入ったので、「下請法を守っていれば大丈夫」という思い込みは危険です。両法の違いを整理し、今日から使えるチェックリストをまとめました。

本記事で解説する『フリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、略称:取適法)』は、従来の下請法ではカバーできなかった個人事業主との取引を適正化するための新しい法律です。

 どっちが適用される?適用範囲の徹底比較

まず、あなたの会社が発注する際に、どちらの法律を優先すべきかを確認しましょう。

最大の違いは「資本金要件の有無」と「取引期間」にあります。

比較表:下請法 vs フリーランス新法

項目 下請法 フリーランス新法(取適法)
発注者の条件 資本金1,000万円超など(規模による) 全ての事業者(1人社長・個人も含む)
受注者の条件 資本金規模による制限あり 特定受託事業者(従業員なしの個人・法人)
主な義務 書面交付、支払期日の設定など 下請法の義務 + 就業環境の整備
禁止行為 11項目(受領拒否、減額など) 7項目(1ヶ月以上の継続取引が対象)

ポイント:下請法は「会社の規模」で決まりますが、フリーランス新法は相手が「一人で働いているか」で決まります。たとえ自社が零細企業でも、相手がフリーランスなら新法の対象です。

【実務用】うっかり違反を未然に防ぐ!対応チェックリスト

新法への対応は、取引の「期間」によって義務の内容が変わります。以下のチェックリストを社内のフローに組み込んでください。

全ての取引で必須(単発・短期も含む)

  • ✅書面・電磁的記録による明示

    • 業務内容、報酬額、支払期日、発注者・受注者の名称などを即座に通知しているか?

  • ✅60日以内の報酬支払い

    • 納品物を受け取った日(役務提供日)から60日以内に支払う設定になっているか?

1ヶ月以上の継続取引で追加(禁止事項の遵守)

  • ✅受領拒否・報酬減額・返品をしていないか?

  • ✅買いたたき(不当に低い報酬設定)をしていないか?

  • ✅購入・利用強制(指定商品の購入などを強いる)をしていないか?

  • ✅不当なやり直しをさせていないか?

 6ヶ月以上の継続取引で追加(環境整備)

  • ✅育児・介護等との両立配慮

    • 申出があった際、納期調整などの配慮を検討しているか?

  • ✅ハラスメント対策

    • 相談窓口の設置や方針の周知ができているか?

  • ✅中途解除の事前予告

    • 30日前までの予告、および理由の開示ができる体制か?

「これって違反?」迷いやすい具体例

現場で起こりがちな「グレーゾーン」をQ&A形式で解説します。

Q. 「メールで発注内容を送れば、契約書は不要?」

    • A. 内容が網羅されていればOKです。 ただし、後から「言った・言わない」にならないよう、法律で定められた項目(5W1H)が全て含まれているか確認しましょう。

Q. 「納品物にミスがあったから、修正が終わるまで支払いを遅らせたい」

    • A. 原則NGです。 支払い期日は「納品(受領)した日」からカウントします。検収に時間がかかっても、60日ルールは守らなければなりません。

 

フリーランス新法(取適法)において、最も重要かつ最初に直面するハードルが「書面(またはメール等)による明示義務」です。

新法では、発注時に以下の項目を「直ちに」伝えなければなりません。これを踏まえた、実務でそのまま使えるテンプレート案を作成しました。

「60日ルール」の計算例

実務者が最も迷うのが「いつまでに払えばセーフか?」という問題です。

フリーランス新法の60日ルールのカウントの仕方

注意!「検収後」ではなく「受領後」からカウント

  • 3月1日:フリーランスが納品(受領日)

  • 3月15日:自社で検収完了

  • 支払期限:4月30日まで(3月1日から数えて60日以内)

検収に時間がかかったとしても、支払期限は「納品された日」からカウントされる点に注意してください。

【要注意】行政の立入検査・是正勧告で指摘されやすい「NG事例」

2024年11月の施行以降、行政は特に「悪質な買いたたき」や「書面の不備」に対して厳しい姿勢を示しています。以下のようなケースは、是正勧告の対象となる可能性が高いです。

事例1:報酬の「一方的な」引き下げ(買いたたき)

  • NG: 長年付き合いのあるフリーランスに対し、「弊社も経営が苦しいので、来月から一律10%カットでお願いします」と、協議なしに一方的に通告した。

  • 指摘ポイント: 予算削減を理由に、十分な協議なく従来の報酬を下回る額を押し付けることは、新法第4条の「買いたたき」に該当します。

事例2:検収の遅延による「支払い遅延」

  • NG: 「担当者が忙しくてチェック(検収)が終わっていないから、支払いは来月に回してほしい」とフリーランスに伝えた。

  • 指摘ポイント: フリーランス新法では、支払期日は「給付(納品)を受けた日」から60日以内と定められています。自社都合の検収遅延は、支払い遅延の正当な理由になりません。

事例3:発注書のない「口頭発注・チャット発注」

  • NG: LINEや電話で「明日までにこれやっといて」と依頼し、金額や納期を記録に残さなかった。

  • 指摘ポイント: 取引の規模に関わらず、「直ちに必要な事項を明示する義務」があります。行政の立入検査では、過去のメールやチャット履歴まで遡って書面交付の有無がチェックされます。

もし「是正勧告」を受けるとどうなる?

「うちは小さい会社だから大丈夫」という油断は禁物です。違反が認められた場合、以下のようなリスクが発生します。

  1. 助言・指導・勧告: 行政から改善を求められます。

  2. 公表: 勧告に従わない場合、社名と違反内容が厚生労働省や公正取引委員会のホームページで公表されます。

  3. 罰則: 命令に従わない場合は、50万円以下の罰金が科される可能性があります

フリーランス新法対応:業務委託発注フォーム(テンプレート)

メール本文や、クラウドソーシングのメッセージ機能、PDFの発注書などで使用することを想定しています。

件名: 【発注書】[業務名] ご依頼の件(株式会社〇〇)

本文: [受託者名] 様

いつもお世話になっております。株式会社〇〇の[担当者名]です。 先般ご相談させていただいた件につきまして、以下の内容にて正式に発注いたします。 本内容は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」に基づき明示するものです。

1. 取引当事者の名称

  • 発注者: 株式会社〇〇(住所:東京都…)

  • 受注者: [受託者氏名または屋号] 様

2. 業務委託をした日

  • 202X年3月5日

3. 給付の内容(業務の詳細)

  • 業務名: 〇〇プロジェクトに関する記事執筆

  • 詳細: 指定の構成案に基づき、3,000文字程度の記事を1本作成。

  • 納品物: Word形式のデータファイル

4. 給付を受領する期日(納期)

  • 202X年3月25日(木) 18:00まで

5. 給付を受領する場所

  • 指定のクラウドストレージへのアップロード

6. 検査を完了する期日(検収期限)

  • 202X年3月31日(火)

    • ※この日までに修正依頼がない場合は検収完了とみなします。

7. 報酬の額および支払期日

  • 報酬額: 55,000円(税込)

  • 支払期日: 202X年4月30日

    • ※給付受領日(3/25)から60日以内かつ、弊社支払規定(月末締め翌月末払い)に基づく。

8. 報酬の支払方法

  • 銀行振込(振込手数料は[発注者/受注者]負担)


上記内容をご確認いただき、ご承諾いただける場合は本メールに返信をお願いいたします。 ご不明な点がございましたら、担当の[担当者名]までお気軽にご連絡ください。

スプレッドオフィスなら、これらの項目を自動入力して書類作成が可能です

運用上の重要ポイント

「直ちに」明示すること

口頭やチャットで「お願いね!」と伝えただけで放置するのはNGです。合意後、タイムラグなしで上記の項目を記録(メール等)に残す必要があります。

 報酬額が確定していない場合

どうしても発注時点で金額が決まらない場合は、「算定方法」(例:1文字あたり5円、実働1時間あたり3,000円など)を記載してください。金額が確定し次第、速やかに確定後の金額を再度書面で送る必要があります。

支払期日の「60日ルール」

新法では、「発注者が納品物を受け取った日」から数えて60日以内に支払わなければなりません。「検収が終わった日から60日」ではない点に注意してください。

 5W1Hを網羅する

「何を」「いつまでに」「いくらで」「どこに」「どうやって」を漏らさないことが、コンプライアンス遵守とトラブル防止の両面で有効です。

まとめ:法遵守は「選ばれる発注者」への第一歩

フリーランス新法の施行により、小規模な取引ほど「丁寧なコミュニケーションと契約」が求められるようになりました。この法律を「面倒なルール」と捉えるか、「優秀なパートナーと健全に働くためのガイドライン」と捉えるかで、今後の人材確保に差が出ます。

「これらのリスクを回避するためには、属人的な管理を脱却し、

『誰がいつ発注しても、法的に正しい書類が自動で生成される仕組み』を作ることが近道です。

クラウド管理ツール『スプレッドオフィス』なら、フリーランス新法で義務化された必須項目を網羅したテンプレートを標準装備。過去の取引履歴も一元管理できるため、万が一の行政検査の際も、慌てることなくエビデンスを提示できます。

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